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甑倒しに向けて。

ブログ 2025.03.16

10月後半から始まったお酒造りも、あと僅かでひと区切り。甑倒し(かけどめ)まであと数日となりました。気を緩める事なく最後まで駆け抜けてまいります。

さて今年は”令和の米騒動”と報道等で騒がれていた通り、私たち醸造家にとっても難しいお酒造りの連続でした。当初予定していたお米の数量が確保できない、そしてお米価格の高騰、と酒造り前から製造スケジュールや使用米の”変更”などに奔走しました。

いざ酒造りが始まると新米が思ったより硬く、溶けにくい事で苦労も多い数ヶ月だったように振り返ります。また醸造中に温度が欲しい時に気温が上がらず、そうかと思えば急な気温上昇など、日々様々に変化する自然と対峙し、たくさんの神経を使ってここまで走り続けてきました。

杜氏を中心に、少ないスタッフ皆で力を合わせて、目の前の変化へその都度対応する事でコツコツ頂上を目指してきた約半年間も、あともう少しでフィナーレです。いろいろとあった酒造りでしたが、ここまで良き酒が誕生しており、中には既にリリースし完売となったお酒も御座います。

育児もそうなんですが、育てていく過程でいろんな事があります。親として反省や喜び、感動や後悔、子と一緒にたくさんの経験を積んで、親子ともども少しずつ成長していくものかと思っています。お酒造りも似ている所があり、お酒を育てていく中で、毎年必ず”学び”が生まれます。私たちは常に頭を柔らかくして、固定観念にとらわれず、いろんな経験を吸収して、酒も人も一緒に成長していければ、と思って常に酒造りと向き合っています。

今年は定番酒の中でも一部酵母を変えてみたり、麹の作り方に変化を与えてみたり、搾る際の細かな変更や、搾ったあとの処理の工夫など、いつもと同じようにしながらも、今までの課題を少しずつクリアできるよう様々なチャレンジを行いました。

やればやるだけ、お酒の味わいとして結果も出てきますし、またうまくいかなかった事は来年に向けた課題として引き続き取り組んでいきたいと思います。10月のお酒造りが始まる前は「まだまだ先は長い」と思っていましたが、気がつけばあっという間にもうすぐ4月です。

3/25が今季最後にお米を蒸す日「甑倒し(かけどめ)」です。

その後もお酒造りは新酒搾ったり、片付けしたりと、しばらく作業は続きますが、まずはここまで怪我なく病気なく、誰1人かける事なく毎日を過ごすことが出来たことにホッとしつつ感謝の気持ちでいっぱい。まだまだ課題多き小蔵ではありますが、日々一緒に取り組んでくださる酒販店様、飲食店様、ご愛飲頂くお客様に感謝しながら、もう少しだけ全力疾走を続けていきたいと思います。

●甑倒し(こしきだおし)
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別名かけどめともいいます。最後のお米を蒸し、仕込みを終えることを”甑倒し”といいます。つまりお酒造りも一区切りという節目の作業。昔は釜に据え付けていた甑(お米を蒸すための道具)が不要となり、甑を横に倒して洗うことからこう呼ばれるようになりました。毎年この日には仕込みが無事終了したことを祝って、祝宴を催しています。
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